TOP > 受賞作品 > 第10回 コミック部門
歴代受賞作品
インフォメーション
応募総数
324作品
最終選考候補
11作品 コミック部門の最終候補はビームマンガ大賞の入賞者がノミネートされます。
選考委員
しりあがり寿(マンガ家)、桜玉吉(マンガ家)、呉智英(評論家)、 奥村勝彦(コミックビーム編集長)
総評
呉 智英
今年も例年に増して、バラエティに富んだ作品が集まったと思います。ただ、ひとつ苦言を呈するならば、応募作品の一部に既成の表現やら言葉を、安直に使用している点が目に付きました。せっかく長い時間を掛けて作品を完成させるのですから、絵の描き方やネームに細心の注意をはらっていただきたいと思います。
桜 玉吉
大変面白く読ませていただいたんで、少し贅沢な意見かな……と思いますが、何か情景を描く時に、もう少しその時の細かい臨場感をキッチリ描く努力をしてほしいなあ。頭の中だけで状況設定してると、なかなか伝えきれないモノが多いしね。ちょっと、似たような場所に行って雰囲気を感じてくるだけでいいと思うんだけど。
しりあがり寿
今年の選考をしていて強く思ったことなんですが、身近な題材を作品化したものが多いせいか、表現力は感じたのですが、想像力は余り感じなかったなあ。そんな中で『納豆怪奇譚』を読んだ時、正直ホッとしました。漫画本来のスペクタクルを感じたというかね、大事なことだと思いますよ。
奥村勝彦
受賞作全般に、アソコをこうしたら、ココをこうしたらとかいろいろ考えて読んでました。編集者の立場からするとツッコミどころの無い漫画は、自分らの存在価値が無いワケで、有り難いことなんですね。言い方を変えると、即戦力はいない分、2~3年後が楽しみな素材が多いってワケです。
受賞作品
◆佳作
『ジャーかポットか』
★作者:空木テツオ(うつぎ てつお)
プロフィール:1974年静岡県生まれ神奈川県在住。専門学校卒。30過ぎで描き始め、釈然を得るために私なりにですが戦闘を致しました。ただもうすでに言うところのおじさんになりつつあり、最近は趣味の散歩などを重点的に……。
★受賞者コメント
賞を頂くことが当初の目的だったので大変うれしいです。漠然としておりますが、非常になにかこう、もう少し丁寧で、何度も読めるような、分相応の話を作りたいと考えています。今回はありがとうございました。
★作品内容
家電量販店に勤めるエース店員。豊富な商品知識とバイタリティで客を次々にさばいていくが、心の中では現在の自分に戸惑いも。ある時、彼の前に老人の客が現れ……。
【選評】呉智英
絵が濃いワリに小ネタが効いてて読みやすい。そこを評価したい。話がもう少しスッキリさせたい。28ページはちょっと多いかも知れないですね。
【選評】桜 玉吉
好きな作風なんで高評価。でも、実際こんな主人公がいたら周りは迷惑なんだろうけど、そんなバリバリした人が、この漫画読めばすごいカタルシスあるんだろうな。
【選評】しりあがり寿
独特な味があって面白い。でも、ラストが淡泊だね。こういうラストが最近多すぎるのが気になるなあ。そういう時代なのかなあ。
【選評】奥村勝彦
ちょっと不器用な部分は感じるけど、もしそれを自覚しているなら、向上心を強く持ち続けて、技術の研鑽にはげんでもらいたい。開き直らずにね。
◆佳作
『診察』
★作者:川島三代子(かわしま みよこ)
プロフィール:1979年静岡県生まれ。現在は静岡県掛川市在住。漫画家を目指して投稿を始めてから3年目になる。現在は化粧品の製造工場と、ファミリーレストランの厨房でアルバイト中。
★受賞者コメント
漫画が完成すると、最初に思い描いていたモノとだいぶ違ってしまうのが、楽しかったり、楽しくなかったりします。なので、なかなか飽きません。漫画を描く事を、ずっと続けていこうと思います。
★作品内容
精神科の病院を舞台に、待合室の患者、担当の医者と主人公とのやりとりが繰り広げられる。だが、その内容は少しずつ主人公の奇行がテーマとなっていき……。
【選評】呉智英
まだまだ未熟な部分もあるが、キャラクターの造形力もあるし、これから伸びるんじゃないかな。将来性を買って押したい。
【選評】桜 玉吉
単なる実話なのコレ? 全体的に魅力があるんで、他のテーマでも読んでみたい。ただ、今回の作品に関しては、ちょっと読むのが辛かったなあ。
【選評】しりあがり寿
漫画として面白く描けていていいと思います。これでその場の『空気』が上手く描けるようになったらさらにいいかも。ただオチの一押しが足りない気がする。
【選評】奥村勝彦
習作としては、これでOK。今後何を描くのか楽しみ。実力はありそうなんで、別の引き出しも見てみたい気がしますね。
◆佳作
『納豆怪奇譚』
★作者:二宮香乃(にのみや かの)
プロフィール:1981年生まれ。神奈川県在住。大学卒業後、専門学校にてデザインを学ぶ。犬と洋楽と映画が好きです。最近再び映画『ホット・ショット』にハマってます。
★受賞者コメント
この度は大変恐縮且つ驚いております。別段納豆に何の恨みもありませんが、何でかこのような作品を描いてしまいました。しかし非常に嬉しいです。この先少しでも面白い漫画を描いていけるよう精進します。
★作品内容
時は江戸。旅の途中、不思議な宿に迷い込んだ何組かの旅人一行。彼らを待ち受けていたのは恐ろしいワナと彼ら自身の凄惨な運命であった……!?
【選評】呉智英
絵とか話に全体的に荒さが目立つが、何か可能性を感じたので押したいと思います。もしかしたら大化けするかもしれないね。
【選評】桜 玉吉
惜しい! 面白いけど、この物語を描くなら、もっと虫とかをしっかり描くべきだね、少し調べりゃ簡単に描けるのにね。
【選評】しりあがり寿
今回の候補作の中で一番想像力を感じましたね。ワクワクしながら読めるというか……。アイデアもいいですし、読んでスッキリできましたから。
【選評】奥村勝彦
一番サービス精神は感じました。技術と同じくらい大事なんですよ、コレ。別に読者に媚びろってんじゃなく、喜ばしたいってえのは作者の本能ですもん。
◆佳作
『トラコ』
★作者:松山紗耶(まつやま さや)
プロフィール:神奈川県出身。フツーに生まれてフツーに育ったので、特に面白い話もないのです。すみません。
★受賞者コメント
描きあげた時はおもしろいと思っても、読み返すと落ち込む、の繰り返しです。でも悩んでいても仕方がないので、振り返るひまもないくらい、ガンガン描いていこうと思います。
★作品内容
田舎の村に突然現れた不思議な女の子。彼女の職業はなぜかレースクィーン!? 彼女とひとり暮らしの婆さんがつづる不思議な物語が始まる……。
【選評】呉智英
絵の面白さと独特の雰囲気を買いたい。ただ、オリジナリティはあるんだけども、話がどうにもわかりづらい。まだまだ未完成なぶん、伸びる余地はあると思います。
【選評】桜 玉吉
突然田舎にレースクィーンが現れるとかのアイデアは奇抜で面白い。ただ、田舎の情景にリアリティを感じなかったのはマイナス。大事なトコなんだけどなあ。
【選評】しりあがり寿
突然やってきた女の子が実は追われているといった設定は面白いんだけど、それだけで終わっちゃった感じがしますね。雰囲気はいいんだけどね。
【選評】奥村勝彦
トーリーとか設定とか未整理なまま描いちゃった印象。そのぶん伸びしろはあるのかも。キチンと準備をすれば面白い漫画が描けるかもしれないなあ。