TOP > 歴代受賞作品 > 第12回 小説部門
歴代受賞作品
インフォメーション
応募総数
681作品
最終選考候補
8作品
選考委員
森 好正(エンターブレイン取締役)、河西恵子(ファミ通文庫編集長)、ファミ通文庫編集部
総評
7本もの作品が受賞作となったことは素直に喜びたい。無論のこと一長一短はあるが、推敲されイラストが付いていく過程を想像するのが楽しみな作品ばかりが残った。とくに優秀賞の2作品は文章テクニックもさることながら、個性あるキャラクターと過不足ない心理描写で読者の感情移入を無理なく誘う。シリーズ化も楽しみな作品と言えるであろう。
なお作品名がいまひとつの応募作が多いのは気になった。何十万人の読者に読んでもらいたいと思うのなら、何十万人に受け入れられるようなタイトルをつけるのはあたりまえ。その段階から志を高く持って貰いたいと思う。
受賞作品
◆優秀賞
『妄想少女』
★作者:やのゆい
プロフィール:青森生まれの東京育ち。多感な幼少期を経て、敏感肌を持つ。調理師免許を得た後、人に言えない妄想をしながら青年期を送る。不真面目な性格だが、宮沢賢治に共感。いつかはグスコーブドリになりたいと願っています。
★受賞者コメント
はじめて投稿した小説が優秀賞を受賞し、驚きつつも嬉しく思っています。書き上げるのに苦労しましたが、自分が妄想したキャラク ターが助けてくれ、楽しんで書けました。これからも頑張り続けたいと思います。
★作品内容
あすみは幼なじみの尚人が大好きな中学生。ある日、謎の虚無僧から、あすみには悪霊が取り憑いていて、除霊しないと災厄が起きると予言される。しかもその災厄は尚人にまで降りかかるという。除霊を願うあすみに与えられたのは、なぜか、男子の妄想する“妄想少女”が見えるコンタクトレンズ。下着姿やメイドなど、様々な男子の“妄想少女”の姿形にノックダウン寸前のあすみだったが、尚人の友人である洋平の“妄想少女”リサと仲良くなる。だが、あすみは、彼女から「尚人にはすでに彼女がいるから“妄想少女”が見えない」と告げられショックを受ける。あすみは、リサの助言でまだ見ぬ“彼女”から尚人を勝ち取ろうと決意するが、野球部の部室が爆発するなど、怪事件が相次いで発生。事件は次第に尚人の周辺にまで及び始め……。尚人を守るため、そして自分の恋と友情のため奮闘するあすみ。恋と暴走と妄想の青春ストーリー!
【選評】河西恵子
オチが気持ちよいくらい読めすぎてしまう真っ直ぐでさわやかな青春恋愛ストーリー。主人公の中学生女子の目線が微妙にリアルなのと、男子の妄想っぷりが笑えます。もう少し展開にひねりを加えると物語が広がるでしょう。
◆優秀賞
『犬とハサミは使いよう』
★作者:さらい
プロフィール:千葉県某大学の工学部卒と文学部卒、千葉をこよなく愛する2人組。卒業後、何だかんだあって小説の投稿を始める。趣味は書店探索。旅行中でも構わず書店に行くので同行者からはすこぶる評判が悪い。
★受賞者コメント
今回はこのような分不相応な賞を頂き、無上の喜びを感じています。ここに至るまでにお世話になった全ての人達にありがとう。そして全ての俺達におめでとう。
★作品内容
俺、春海和人は読書バカだ。歩きながら本を読んで犬の糞を踏んでしまうくらいの読書バカだ。そんな俺に最大のピンチ! いつもの喫茶店で読書をしていたら強盗犯に撃たれて死んでしまったのだ。これじゃ、大好きな秋山忍の『大罪』シリーズの最終巻が読めないじゃないか! 本が読みたい! 願いが通じたのか、俺はなんとか現世に帰ってくる。ただし、ダックスフンドの姿で! そんな俺を拾ってくれたのは謎の女、夏野霧姫。しかしこの女、性格が最悪だ。ハサミ片手に「意見が合わない人間を私色に染めていくのが大好きなの」「ちょっとKILLだけよ」と超ドSぶりを発揮。しかも、こいつがあの秋山忍だったなんて! そんなご主人様(一人)と犬の俺(一匹)のSMコンビの生活が始まった。強盗事件の真相は? 俺は人間に戻れるのか? そう、これは一人と一匹のいつまでも続くバカ騒ぎ──。ミステリータッチで贈る痛快不条理コメディ!
【選評】河西恵子
犬になっても本を読むという滑稽な姿も、“文学”を愛するものなら共感できる姿として上手く描けていて良かったです。作家と読者という構図のドラマに全体の仕掛けも施されたテンポとセンスのある完成度が高い作品。
◆特別賞
『ちっともファンタジーじゃない話 ~パンツ編~』
★作者:otohime式【おとひめしき】
プロフィール:昭和61年の冬に産まれる。中学1年の夏休み明けから半引き篭もり生活に突入。無為なる10年間の中で漠然と小説家を目指し始め、23歳の春から執筆を始める。そして、現在に至る。
★受賞者コメント
このような栄誉ある賞をいただけたこと、とても嬉しく思っています。選考委員の皆様の期待を裏切らぬよう、精一杯努力してまいります。そして何より、読者の皆様により良い作品を提供できるよう頑張ります。
★作品内容
よもやパンツ(女性用)を拾って現代日本の奇跡〈アガレの法力〉の真実に辿り着くとは!! 事の始まりは学園の廊下。脱ぎたてと思しきパンツが落ちていた。パンツを拾った私(男)は「持ち主へ返すべし」との使命感から、仕方なく、痴漢の冤罪と攻撃法力を受けつつも女子たちのスカートの中を見て回る。その苦難をへて、ミャー(美少女)を見つけた。偶然見えたあの白桃の如きお尻……穿いてない彼女こそ持ち主!! しかしミャーは人ではなかった。彼女は〈アガレの法力〉の根源にして我々の世界と対なす〈裏界〉から、悪意ある者によって"世界崩壊の危機"にあるこの世界を救いに来たのだ! 彼女が素晴らしいお胸を痛める姿は見たくはない! 私は敵が送り込んだ〈業魔〉を倒し、〈裏界〉に乗り込んだ。そこで〈アガレの法力〉の歴史を覆す真実を知るとも知らず――。世界を救い、私はパンツを返せるか!? パンツに始まりパンツに終わる世界救世の学園法力バトル、開幕!!
【選評】河西恵子
パンツを拾っただけでよくもここまで話が広がるもんだと、ある意味感心させられる作品です。主人公たちのエロネタオンパレードと、中盤以降のシリアス展開とのミスマッチ具合が現時点では読者を選んでしまいそうです。
◆特別賞
『美少女慟哭屍叫【デススクリーム】セレンディアナ』
★作者:根木健太
プロフィール:1985年生まれ、広島育ち。退職前後の暇な時期に長年の夢だった小説の応募をしてみたら受賞してしまい、大変びっくりしながら今後について考えようかと思い始めている。
★受賞者コメント
受賞の連絡を頂いた時、心の底からの感想は「助かった」でした。何がどう助かったのか今となってはさっぱりです。ともかく、選考に関わられた皆様には感謝してもしきれません。ありがとうございました。
★作品内容
それは魔法少女の変身ステッキだった。オタクな兄ちゃんの影響で、ソッチ系には詳しいあたしでもそれは見たことない。でも謎はすぐに解けた。「それで『セレンディアナ』に幻身して一緒に戦ってください」としゃべるウマが現れたからだ。「ボクは魔族。神が魔界を滅ぼそうとしてるんです!」「いや。滅べよ」「この人でなしー!!」なんて罵り合いをしてる間にあたしまで神獣に攻撃され、バカ馬にムリヤリ変身させられちゃった! あたしの体を纏う黒く禍々しい衣装、武器は『業砲ヘルブレイズ』。「可愛くねー!! これ火炎放射器?」お願い、あたしの魔法少女への憧れを壊さないで~! しかも神族側の魔法少女、ソルインティと戦う羽目になるなんて! あっちの純白の衣装はまさにあたしの理想の――「あたしあっちがいい」「あっちに寝返っていい?」「いいわけあるか――っ!!」そしてわたしは致命的な一打をくらった……。神も悪魔もブッ飛ばす、ブラック系魔法少女ストーリー!!
【選評】河西恵子
お話としてはよくある“魔法少女モノ”だが、主人公の腹黒さや意表を突く展開など、荒削りながら面白い作品です。行き当たりばったり感が強いのでキャラの良さを生かして、どう物語性を構築させるかが今後の課題です。
◆特別賞
『エース、始めました。』
★作者:月本 一【つきもとはじめ】(受賞者名は佐藤祐真)
プロフィール:1989年東京産。某国立大2年となった春、「今年は月に1本書くぜ!」と息巻いた矢先の1本目でまさかの受賞。そろそろ知人が「ドッキリ大成功!」の看板を持ってやって来るのではないかと身構えている。
★受賞者コメント
身に余る光栄だと思う反面、もっと上を狙えたのでは、と若干欲張りな気持ちもある特別賞、ありがとうございます。5年10年と言わず、一生現役で活動できる物書きを目指して、日々自己練磨に励みたいと思います。
★作品内容
「投げろ!」 桂木悠は遠山高校入学三日目の帰り道、キャッチャー男子、中村に声をかけられる。それからというもの「ヘイ! 寝癖ボーイ!」と、ところかまわず彼を野球部に引き入れようとする中村に日々付き纏われることに。桂木は中村の強引さに折れ、渋々ながら野球部に入部。しかし、当の野球部は廃部の危機に瀕していた!? 夏までに公式戦で一勝しなければ、廃部になってしまうという野球部を立て直すため、桂木は部員集めに奔走するが、集まるのは変人ばかり。寄せ集めで実力不足の否めない野球部だったが、マネージャー陣のサポートと中村の「飴(?)と鞭」の特訓で力をつけ、助っ人を入れてなんとか公式戦に出場することに。しかし、相手チーム蒼海高校野球部のピッチャーは、中学時代に桂木からエースの座を奪い、彼が野球をやめるキッカケとなった少女だった――!? バカ騒ぎときどき野球の爆笑青春コメディー!
【選評】河西恵子
野球モノのようで野球モノに終わっていない青春ドラマ。サブキャラクターたちの変なテンポや個性に着いていけるかが肝となりますが、次第に物語に引き込まれていきます。ヒロイン不在などラノベ要素の弱さが難点です。
◆特別賞
『言想のクライシスゲーム』
★作者:一橋 鶫【ひとつばしつぐみ】
プロフィール:1987年生まれ、広島出身。日本近代文学と現代海外ミステリとライトノベルと少女マンガと深夜アニメと音ゲーと大口を叩くのが趣味。最近は大蔵経の字面を追いながら現代社会を生き抜く方法を探しています。
★受賞者コメント
「何かしら受賞するだろう、という確信は投稿したときすでにありました」と友人に告げる私の声は震えていたそうな。素晴らしい物語をお届けしたいと思います。
★作品内容
『言想魔術』。それは、言葉に言霊を乗せて不思議な力を得る魔法。<言霊会>に属する魔術師の弓原歌鳥は、幼い頃に潜在的能力《マシンガン・トーク》を発動させ家族を殺めてから、魔術師として訓練されてきた。歌鳥は言霊会と対立する魔術師が集まる書店<言想堂>にアルバイトとして潜入するが、その目的は《言霊に愛された少女》フラグの命を奪うこと。しかし、フラグの術によって記憶を封じられた歌鳥は、普通の高校生として言想堂の一員となる。一転して言霊会との戦いに身を投じた歌鳥は、その激戦の最中命を落としてしまう。言想魔術で蘇った歌鳥だが、その記憶は封印以前のもので、再び言霊会の刺客としてフラグに襲い掛かる! ショックのあまり言霊の繭に閉じこもってしまったフラグ。しかし、言霊会の真の目的を知り、フラグへの愛に気づいた歌鳥は、《マシンガン・トーク》により最後の戦いに挑む! 言葉を自在に操る異能力バトルストーリー!
【選評】河西恵子
「言葉遊び」を徹底して物語に練り込んだところなど、雰囲気のある作品です。構成的な仕掛けもされているものの、未熟で技術の追いついていない部分があり、まだ読者に向いた物語にはなっていないので努力が必要です。
◆東放学園特別賞
『忌み神のダーカー』
★作者:神門 京【みかどけい】
プロフィール:1990年生まれ、東京出身。中学時代にライトノベルと出会い、以来7年近く執筆の試行錯誤を繰り返してきた。悲観も楽観もロクな結果にならなかったが、それでもなんとか生存中。
★受賞者コメント
正直受賞したのが未だに信じられず、ただただ戸惑うばかりです。先を思うと不安ばかりが浮かび、今一つ喜び切れずにいます……。とりあえず恩師や友人たち、片想い中のあの人を始め、支えてくれた人たちに感謝を。
★作品内容
悪魔憑きでありながらも悪魔に支配されることなく、悪魔を狩る存在セディア。そして、彼の幼馴染であり、公に悪魔と戦う力を持った聖職者プリーストの少女コレー。夜の闇の中、悪魔が跋扈する首都アクロで、二人は悪魔を狩る日々を送っている。ある日、プリーストが心臓を抜き取られ、惨殺されるという事件が起きる。悪魔憑きであるセディアに疑いの目が向けられ、彼はコレーと共に自身の無実を証明するために動き出した。そして、明らかになったこの事件の黒幕。それはかつて天才と名を馳せたプリーストであるリカオンその人だった――! 私利私欲に溺れる人間に絶望したリカオンは人類を滅ぼすため、町中の人間を取り込んだ魔法陣で巨人の悪魔ギガス族を召喚し、彼自身も同化してしまう。攻撃を受け付けないギガス族を冥界へ送り返すため、セディアはついに自身の本性を現す――。悪魔の闇と神の雷のコントラストが織り成すダークファンタジー!
【選評】河西恵子
悪魔憑きと聖職者など、設定も世界観もきちんと考えている作品で文章もしっかりしています。ただ、神と悪魔という設定は有りがちなものなので、読者が読みたいのは何かを考え、作品に個性を出していくことが必要です。