TOP > 受賞作品 > 第19回 ライトノベル ビーズログ文庫部門
歴代受賞作品
インフォメーション
応募総数
304作品
最終選考候補
5作品
総評
中村昭子
(ビーズログ文庫編集部 編集長)
今回は、女性向けライトノベルの部門を『ビーズログ文庫部門』と『ビーズログ文庫アリス部門』の2部門に分けたことで、ビーズログ文庫部門には主に異世界を舞台としたファンタジー作品が多く集まりました。
ビーズログ文庫というレーベルの特性をよく捉えている反面、少女小説の型にはまりすぎて、既存の作品と似た印象になってしまっているもの。
ビーズログ文庫というレーベルの枠に囚われず、オリジナリティを追求するあまり、読み手に分かりにくい内容になってしまったもの。
選考を通過できなかった作品に共通しているのは、この2パターンのどちらかに該当していることが多いです。今回の受賞作はその両方、またはどちらかを満たしており、『ビーズログ文庫』として書店店頭に並ぶことがイメージできる作品を選出いたしました。
来年度はえんため大賞から独立して、2部門から成る『ビーズログ小説大賞』を実施する予定です。記念すべき第1回への皆様の投稿、お待ちしております!
受賞作品
◆優秀賞 賞金50万円
『異人喫茶シュガーリィテイルへようこそ』
★作者:来栖千依
秋田県在住の9月生まれ。豊かな自然に囲まれながら、紅茶と装飾的なファッションとレトロ映画を愛でる。往年の映画女優がみせる凜とした強さに憧れています。女の子が頑張る物語が好きなルーツかもしれません。かわいい小物を買い集める癖があり、執筆環境はいつも賑やかです。
★受賞者コメント
素晴らしい賞をいただけて光栄です。選考に携わられた皆様、本当にありがとうございました。長年の夢だった小説家への道がようやく開けました。物語からもらった勇気やときめきや優しさを胸に、これからはお届けする側として努力して参ります。よろしくお願いいたします。
★作品内容
妖精が見えるせいで日陰者としての生活を強いられていた有紗はある日、イギリス人である父の遺産を相続するために英国へ渡ることになった。しかし義兄たちには『異人』だと追い出され、さらには手持ち金がなく帰国もできないまま唯一の遺産として譲り受けた辺境の地——エリカコートの屋敷へ身を寄せることに。が、そこにはたくさんの妖精と見知らぬ人の姿、それと……美味しそうな匂い?
「——ようこそ、『執事喫茶シュガーリィテイル』へ」「し、しし、執事で、喫茶?」
執事のギルとパティシエのマオ、見習いのトニー。どうやらここは、ワケあり(?)な彼らが営むちょっと不思議な執事喫茶のようで!? この場所と妖精たちを守るために、立派な主人を目指します!
【選評】
突然、文化も言葉も異なる異国に放り込まれたヒロインが、不思議な喫茶店を営むお屋敷を相続することから始まる物語。女性が好きなキーワード・設定を無理なくすべて盛り込み、かつ最後まで飽きさせない展開にまとめた筆力が評価されての受賞となりました。後半の展開が多少駆け足になってしまった点は残念でしたが、読後感が非常に良く、総合評価の高い作品でした。
◆奨励賞 賞金5万円
『秘密の姫君はじゃじゃ馬につき』
★作者:かわせ秋
山と川に囲まれた田舎育ちの田舎在住。10月生まれの天秤座。執筆のお供はおかき(塩味)と緑茶。デジタル機器に翻弄されっぱ なしのアナログ人間。基本的にインドア派だが、一度外に出ると糸の切れた凧のようにあちこち放浪する悪癖持ちです。
★受賞者コメント
受賞の連絡をいただいた際、某テレビ番組のドッキリ企画かと疑いました。選考に携わっていただきました皆様、それから好き勝手を許してくれる家族にはひたすら感謝しかありません。つかの間のひとときに笑いをこぼしてもらえるような、続編が読みたいと思っていただける物語を綴れるように精進して参ります。
★作品内容
古い歴史と高水準な文化・経済を誇る大国レーヌグラン王国。その美しき(自覚あり)第二王女オフィーリアは、虚弱を理由に公の前から秘されてきた。しかし……鍛錬に励んだおかげで体質は改善。それどころか国王直属の騎士団・《聖なる六つの十字架(セント・クロワ)》に入団を志願するじゃじゃ馬姫に成長! フローラと名前を変え、身分も隠して仮入団を果たすが、配属された第五隊の隊長アレクシオは大の美女嫌いで? 「ご自慢の顔を生かして玉の輿を狙え。退団届けはだしておく」「かならず正騎士になる。せいぜい利用させてもらうわ!」男だらけの騎士団で、秘密の王女の見習い騎士生活はどうなる?
【選評】
剣の腕に覚えアリの王女が騎士になるため、女嫌いの隊長がいる騎士団に入団するという、少女小説の王道ともいえる物語。読んでいて既視感を覚える部分はあったものの、どのキャラクターも非常に魅力的で、ヒロインとヒーローの関係性が変わっていく様子が、女性読者ならときめかずにはいられないものになっており、好感度の高い作品でした。
◆奨励賞 賞金5万円
『引きこもり天才魔法学者の高貴なるご友人』
★作者:紅城 蒼
神奈川県在住。「絶対にA型じゃないよね」と言われるタイプのA型。ラーメンが大好物で、三日に一度は食べないと落ち着きません。子供の頃から魔法や妖精、貴族やお姫様などのモチーフが大好きで、頭の中ではいつもそういった世界観での妄想が繰り広げられています。
★受賞者コメント
夢が叶い、スタートラインに立たせていただけることが本当に嬉しいです。選考に携わって下さった皆様に、心より御礼申し上げます。読んでくださる方の心に少しでも残るような、そしてキュンキュン萌え転がることができるような作品を書いていけるよう、精一杯努力したいと思います。
★作品内容
王国内でトップクラスと名高い魔法研究院に勤めるリーシャは、最年少で博士号を取得した天才少女。……ただし、重度の引きこもり! ある日研究院内で魔法道具が暴走し、咄嗟にリーシャが助けたのは、新たに最高責任者に就任したレオナルド王子だった。昔からリーシャの大ファンだと告げるレオナルドは、「私に魔法を教えて欲しい!」と前のめり。勢いに負けて渋々承諾したリーシャだが、明るく誠実なレオナルドと接するうちに前向きになっていく自分に気がつく。一方、町では王族を狙った暴行事件が勃発。そこには、リーシャが長年研究している古代魔法が関わっているようで? ひきこもり天才魔法学者が世界を変える、ラブファンタジー!
【選評】
天才魔法学者だけど人嫌いの少女が、彼女のファンだという自国の王子に魔法を教えることになって……という物語。主人公の少女の成長が丁寧に描かれていて、読んでいて気持ちの良い作品でした。王子のキャラクターも魅力的です。恋愛要素が若干薄い点と、ヒロインの造形がやや男性向けのライトノベル寄りになっている点が、ビーズログ文庫としては残念でしたが、それを上回る魅力が感じられた作品でした。