TOP > 受賞作品 > 第16回 小説部門
歴代受賞作品
インフォメーション
応募総数
758作品
最終選考候補
6作品
選考委員
青柳昌行(エンターブレイン ブランドカンパニー長)、
河西恵子(ファミ通文庫編集長)、
ファミ通文庫編集部
総評
河西恵子
(ファミ通文庫編集長)
最近の応募者はやはりよく勉強をしていると感じました。「異世界」「チート」「ゲーム」「バトル」などのテーマを意識したものは、確かに今流行りではありますが、逆に商品としては市場に溢れ過ぎています。新人賞としてはその先の流行りを自ら生むようなアイデア、テーマの独創性が欲しかったところです。そんな中、今年は“原点回帰”をモットーに、ファミ通文庫らしい青春作品を選びました。優秀賞の2作も特別賞も「青春」「熱血」を色濃くテーマに感じ取ることができ、物語もシンプルながらも読ませる作品です。東放学園特別賞も壮大なファンタジーの世界観の中で、少年少女の成長譚にチャレンジした、一定の実力の窺える作品となっています。
受賞作品
◆優秀賞
『avec black』
★作者:久遠 侑(くどう ゆう)
プロフィール:80年代末の生まれ。東京近郊在住。中学生の頃にライトノベルに出会い、文学作品と共に面白さと心の震えを求めて、深夜の自室で、放課後の教室で、読書生活を送り気がつけば自らが小説を書く側にまわっていた。
★受賞者コメント
沢山の応募作のなかから私の作品を選んでくださり、とても嬉しく、また光栄に思います。これからはこれまで以上に精進し、「書きたい」という衝動、欲望が続く限り、面白い小説を書き続けていきたいと思います。
★作品内容
「上品さ」と「不気味さ」を兼ね備えたミステリアスなクラスメイト――黒崎麻由は「隔絶した雰囲気」のため、誰もが気になるほどの存在感を持ちながら、周囲から距離を置かれていた。周囲の生徒同様に彼女を見ていた黒井光輝は、文化祭の準備をきっかけに今まで気づかなかった彼女の内面に惹かれはじめる。黒崎を不気味がっていたクラスメイトも徐々に話をするようになり、クラスに馴染みはじめた頃、彼らの通う入谷高校に不審者が出没するという噂が立つ。黒井はその真相を暴こうとするオカルト好きの山田修に巻き込まれ夜の学校に侵入するのだが、何故かそこに黒崎がいて――!? 等身大の高校生活を丁寧に描いた、ドラマティック青春ストーリー!!
【選評】川崎拓也(ファミ通文庫副編集長)
こんなクラスメイトに囲まれた学園生活を送ってみたいと思わせる学園青春ストーリーとして高い水準の作品でした。そして特筆すべき点は、とにかくヒロインの黒崎麻由さんの魅力! 黒崎さんが可愛すぎてもう……。徐々に不穏な空気が漂っていく展開の中、彼女がクラスに馴染めるのか、また幸せな結末を迎えられるのかと、主人公に共感しつつ先が気になってページを捲る手が止まらないという読んだら黒崎さんに恋をしてしまう作品。
◆優秀賞
『田野音好の青春聞聞録〜キミに一耳惚れ〜』
★作者:もちたろう
プロフィール:京都府育ちで、現在は東京都在住。大学卒業後、フリーターを経て編集プロダクションに入社。ライターを7年続けるも、2013年に一念発起。特に根拠の無い自信を糧に作家を目指し、約1年後に受賞に至る。自信って大事。
★受賞者コメント
個人的な「カッコいい職業ランキング」第1位は作家です。2位は宇宙海賊。この先、作家1本で食べて行けたら最高にカッコいい人生だなと。応募者を代表していただいたチャンスなので、無駄にせぬよう精進いたします。
★作品内容
人一倍聴覚に優れている音フェチの主人公・田野音好は、高校入学早々のある日、自分がずっと理想としてきた、ある『声』を聴く。振り向くと、そこには天使のごとき美少女が!! なんとか彼女に近づこうと考えた音好は、彼女が入部したと思われる『朗読部』に仮入部を決めるのだが、その声の本当の持ち主は三崎友というイケメン男子だったと知って愕然。しかし持ち前の根性で、あの時の美少女――二宮向日葵を捜し出し、さらに朗読部へ入部させることに成功する。音好、友、そして向日葵と、新入生三人が揃ってにわかに活気づく朗読部。しかし、そこではなぜかトラブルが次々と発生し……!? 耳から始まる学園青春ラブコメ!!
【選評】川崎拓也 (ファミ通文庫副編集長)
異能とまではいかないが、様々な音を聴き分けられる主人公というライトノベルとしては一風変わったアイデアの作品。しかし内容としては楽しい学園コメディに仕上がっていました。またそれに加え主人公・音好と友人の友、そしてヒロイン・向日葵の三人の関係が非常に微笑ましく魅力的に描かれていた点も選考で大きく評価されました。読後にこの三人のストーリーをもっと読みたいと思わせることができているのは素晴らしいと思います。
◆特別賞
『魚里高校ダンジョン部! 藻女神様と行く、迷宮甲子園』
★作者:安歩 三(あぶ さん)
プロフィール:西洋演劇の世界に魅せられ、日本を飛び出したのが10年前。舞台美術に翻訳にドラマツルグ、10年間色々とやったその後に、辿り着いたのはライトノベルの世界でした。演劇でも小説でも、表現することは楽しいです。
★受賞者コメント
「おーい、ダンジョンでスポ魂やろうぜー」こんな突拍子もない作品を選んで下さったファミ通文庫様、また、投稿サイト掲載時に応援して下さった読者の皆様にも感謝を。お返しに、もっと面白い作品にできるよう頑張ります!
★作品内容
ダンジョン競技。それは、エルフやドワーフ、獣人たちが迷宮を探索し、魔物相手に技を競うというスポーツ。その夢の舞台「迷宮甲子園」を目指す須田タツマは、魚里高校に入学すると早速ダンジョン部に入部した。だが、純血のヒト族であり何の神の守護も受けていない彼は、監督から退部を勧告されてしまう。部への復帰のため、タツマは封印されている神の守護を得ようと、あるダンジョンの探索に出かけるのだが、そこで出会ったのは――髪!? 長い封印の末それだけが残ったという100%黒髪の女神オルタの守護を、誤解と勘違いの末に手に入れたタツマ。彼は果たしてダンジョン部に復帰出来るのか!? ダンジョン×熱血学園グラフィティ、開幕!!
【選評】川崎拓也(ファミ通文庫副編集長)
「ダンジョン部」「藻女神様」「迷宮甲子園」と気になるワード満載のタイトル通り、オリジナリティとエンターテイメント性に溢れる作品でした。とにかく藻女神オルタ様のインパクトが凄い! これだけ独創性に富んだ要素をまとめた力技に拍手を贈ります。しかもそんな特殊且つ珍奇な設定目白押しな作品なのに、その内容は超が付くほどの王道熱血青春ストーリーになっているという点も大きく評価されました。
◆東放学園特別賞
『スピリット・レイジング』
★作者:立座翔大(たつざ しょうた)
プロフィール:1988年3月2日生まれ。現在は東京都練馬区に在住。23歳のときに小説を書こうと思い立ち、東放学園映画専門学校に入学する。東放学園を選んだ理由は、インターネットで検索した際、最初に目についたから。
★受賞者コメント
この度は東放学園特別賞を受賞させていただき、ありがとうございます。とはいえ他の受賞者の方々に比べると、後方からのスタートです。しかし少しでも貢献できるように頑張りますので、よろしくお願いいたします。
★作品内容
守護聖戦――精霊たちは闇の精霊より人間を守るため戦い、その末、実体を失い欠片となり世界中に散らばった――。しかしその伝説は偽りで、闇の精霊とされた剣の精霊ルミナが人間を守るため他の精霊と戦い、その代償に記憶を失い各地へと散ってしまったのだ。2年前、仲間の裏切りにより瀕死の重傷を負ったイズルは、ルミナに出会い、精霊契約を結び命を助けられた。そして彼女の力と記憶を取り戻すため、共に欠片を探す旅に出る。ある時、立ち寄った街で誘拐事件を解決したふたりだが、事件の背後にイズルを瀕死に追いやった、かつての仲間とルミナに敗れ消滅したはずの精霊アウラの影を見る――。 精霊宿る地で繰り広げられるエレメンタル・ファンタジー!
【選評】川崎拓也(ファミ通文庫副編集長)
かつて精霊が存在した世界という、ある意味正統派ファンタジーの世界観に真正面から取り組み、きっちりと一本の作品としてまとめた力量を評価したいと思います。イズルとルミナの主人公コンビのやりとりも楽しく、またバトルシーンでの彼らの「強さ」も気持ち良く描写されていました。ただ、若干ストーリー展開に急ぎすぎているところがあり、設定を生かしきれず、物語の魅力を表現しきれなかったところが少々残念ではありました。